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「カウンセリング技法」を使ってクレーム受付の初期段階をクリアする

カウンセリングでは、クライアントの心理的な問題に対応するために、さまざまな技法が開発されてきました。これらの技法は、カウンセラーとクライアントの信頼関係を構築し、問題解決に向けた適切な支援を行うためのものです。

このようなカウンセリング技法は、クレーム対応の場面でも非常に有効に活用できます。クレーム対応では、顧客が不満や怒りを抱えていることが多く、適切なコミュニケーションを取ることが求められます。特に、クレーム受付の初期段階では、顧客の話をしっかりと聴き、受け止め、共感することが重要です。このプロセスを適切に行うことで、顧客の感情を落ち着かせ、スムーズな問題解決につなげることができます。

本稿では、カウンセリングの代表的な技法を紹介し、それらをクレーム対応にどのように応用できるかを詳しく解説します。以下の6つの技法に焦点を当てます。


1. 傾聴・擬似体験・感情移入

傾聴とは、相手の話を注意深く、好意的に聴くことです。単に「そうなんですね」と相槌を打つだけではなく、相手の気持ちに寄り添い、「自分がその立場だったらどう感じるか」と疑似体験をすることで、より深いレベルでの感情移入が可能になります。

クレーム対応では、顧客の話をじっくり聴き、「この状況であれば自分も不満を感じるかもしれない」と考えることが重要です。顧客は怒りや不満を抱えており、時には強い言葉を投げかけることもあります。しかし、それは必ずしも個人的な攻撃ではなく、単に感情の発露であることが多いのです。顧客の立場を尊重し、感情移入を行うことで、相手に「自分の気持ちを理解してもらえている」と感じさせ、信頼関係を築くことができます。


2. うなずき

傾聴や感情移入を行っていても、それを顧客に伝えなければ意味がありません。そのために重要なのが「うなずき」です。うなずきは、「あなたの話をしっかり聴いていますよ」というサインになります。

うなずく際には、顧客が息継ぎをするタイミングを見計らい、適度に行うことが大切です。頻繁にうなずきすぎると、逆に「適当に流している」と思われることがあります。また、顧客の感情が高まっているときには、強いうなずきをすることで「深く共感しています」と伝えることができます。


3. オウム返し(くりかえし)

オウム返しとは、顧客の発言をそのまま繰り返すことです。これにより、顧客は「自分の話が正しく伝わっている」と感じ、安心感を得ることができます。また、自分の発言を客観的に聞くことで、冷静さを取り戻しやすくなります。

例えば、顧客が「この商品、全然使えないんだけど!」と言った場合、「この商品がうまく使えなかったんですね」とオウム返しをすることで、顧客の気持ちを受け止めていることを示せます。


4. 言い換え

言い換えは、顧客の発言を異なる言葉で表現する技法です。例えば、「この店の対応は最悪だ!」と言われた場合、「今回の対応にご満足いただけなかったのですね」と言い換えることで、顧客の怒りを和らげ、冷静な対話を促すことができます。

この技法の利点は、顧客の発言を客観的な言葉に置き換えることで、問題解決に向けた話し合いがしやすくなる点です。言い換えを適切に行うことで、感情的なやり取りを回避し、建設的な対話へと導くことができます。


5. 明確化

顧客が感情的になっている場合、その発言は曖昧であったり、論理的でなかったりすることが多いです。そのため、スタッフ側が顧客の言葉を整理し、明確化することが必要です。

例えば、「もう二度とこの店に来たくない!」という発言の背後には、「商品に問題があった」「店員の対応が悪かった」などの具体的な不満が隠れています。そこで、「今回のご不満は、商品の品質に関するものでしょうか、それともスタッフの対応についてでしょうか?」と尋ねることで、問題の本質を明確にすることができます。


6. 要約

顧客が話す内容は、時に長く、まとまりのないものになりがちです。そこで、スタッフが適切に要約することで、顧客が自分の不満を整理しやすくなります。

例えば、「つまり、お客様としては、◯◯の点にご不満をお持ちで、それを解決したいとお考えなのですね」と要約することで、顧客自身が冷静になり、解決策を模索しやすくなります。


まとめ

カウンセリング技法をクレーム対応に応用することで、顧客の感情を落ち着かせ、スムーズな問題解決につなげることができます。傾聴・感情移入・うなずき・オウム返し・言い換え・明確化・要約といった技法を適切に活用することで、顧客との信頼関係を築き、クレーム対応を円滑に進めることが可能です。

これらの技法を実践することで、クレーム対応の質を向上させ、最終的には顧客満足度の向上にもつながるでしょう。クレーム対応は、単なる問題処理ではなく、顧客との関係を深める重要な機会です。適切な対応を心がけることで、クレーマーがリピーターや優良顧客へと変わる可能性もあるのです。



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