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気軽にできるメンタルヘルスケア──働く人にこそ必要な「こころの健康習慣」

私たちは毎日、仕事に追われ、スケジュールに追われ、情報に追われながら生きています。そんな中で、知らず知らずのうちに心が疲れてしまうこと、ありませんか?

2000年(平成12年)、厚生労働省が「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定しました。つまり、働く人たちのメンタルヘルス(こころの健康)を職場ぐるみで守っていこうという動きが、すでに20年以上前から始まっていたのです。

この指針では、職場でのメンタルヘルスケアにおける基本的な考え方として、4つの柱が紹介されています。それぞれを、少しくだけた口調で、でもしっかりご紹介していきますね。


① セルフケア──「まずは自分のことは自分で守ろう」

メンタルケアの第一歩は、やっぱり自分の心の状態に気づくこと。疲れた時に「疲れたなあ」と感じられるセンサーが大事です。

たとえば、
- 最近寝つきが悪い
- イライラしやすくなった
- 仕事にやる気が出ない
- 食欲が落ちた or 甘いものばかり欲しくなる

…こんなサイン、心からのSOSかもしれません。

心の健康を保つには、バランスの取れた食事、適度な運動、良質な睡眠という、いわゆる「生活リズムの三本柱」が実はとても大切です。ちょっと疲れたなと感じたら、無理して頑張るより、早めにリズムを整えてみましょう。

💡脳は“適度な運動”で元気になる!
有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)は、脳内の「セロトニン」という“幸福ホルモン”を増やしてくれます。たった15分でも、気持ちが軽くなることがありますよ。


② ラインケア──「上司や同僚の“ちょっとした気づき”が救いになる」

セルフケアだけではどうしても乗り越えられない時、頼りになるのが「身近な人のサポート」です。これを“ラインケア”と呼びます。たとえば、リーダーやマネージャーがこんなふうに気づいてくれると助かります。

- 「最近、遅刻が増えてない?」
- 「仕事の進捗、遅れてるけど大丈夫?」
- 「顔色、少し悪いけど…」

この“ちょっとした気づき”が、実はとても大事なんです。本人が言い出せなくても、周りの人の観察と声かけが、支援の第一歩になります。

💡うつ病の兆候は“表情”や“口数の変化”に表れる
特に、急に静かになるタイプの人は注意が必要。性格的に無理をしやすい人ほど、異変を口にしない傾向があるため、周囲のサインキャッチが重要になります。


③ 事業場内スタッフによるケア──「専門家のサポートは身近な資源」

職場に産業医やカウンセラー、保健師がいる会社では、こうした専門スタッフが“職場ぐるみのケア”をサポートしてくれます。これを「事業場内スタッフによるケア」と呼びます。

具体的には、
- ストレスチェックの実施
- カウンセリングの窓口提供
- リラクセーション指導やメンタル研修 など

ただ、こうした制度があっても、「相談しづらい」「何を話していいかわからない」という人も少なくありません。

そこで大切なのは、専門スタッフが“話しかけやすい存在”になること。定期的にフロアに顔を出したり、雑談ができるような雰囲気をつくったり、社内掲示板やイントラネットでちょっとした情報発信をするのも効果的です。

💡雑談が生む“メンタルヘルス予防効果”
職場での何気ない雑談は、ストレスを「ためこまない」ための重要なクッションになります。雑談力は、実は職場の“心の安全網”の一部なのです。


④ 事業場外資源によるケア──「相談しづらいときは、プロに頼ってみよう」

もし、職場のスタッフに話すのはちょっと…と感じたら、外部の専門家に相談するのも大きな選択肢です。

最近では、多くの企業が「EAP(Employee Assistance Program)」という制度を導入しています。EAPは、従業員とその家族が抱える悩みを専門家に相談できる外部支援プログラムで、以下のようなことをカバーしています。

- 心の不調
- 家庭問題(夫婦関係、育児など)
- お金の悩み
- アルコール・薬物依存
- 法律トラブル など

EAPはアメリカでは9割以上の企業で導入されているほどメジャーな制度で、日本でも年々利用が増えています。

💡日本のEAP利用率は年々増加中!
2015年頃にはわずか数%だったEAPの導入率が、現在では約30〜40%まで上昇。大企業を中心に、中小企業にも少しずつ広がってきています。


まとめ:「こころの健康」は気軽に話せることから

メンタルヘルスという言葉はどこか堅苦しく聞こえるかもしれませんが、実はとても身近な話。誰にでも、気分が落ちる日、やる気が出ない日、何をしても楽しくない日ってありますよね。そういうときに、「これは疲れてるサインかも」と気づいたり、誰かに話してみたり、ちょっと深呼吸してみる。それだけでも十分なセルフケアです。

職場の仲間、上司、専門家、外部サービス…頼れるところはたくさんあります。無理をしないことが、一番の前向きな姿勢です。「体の健康」と同じくらい、「心の健康」も大切にしましょう。肩の力を抜いて、今日からできることから始めてみましょう。きっと、働く毎日が少しだけラクになりますよ。



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