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〈防災減災社会〉最悪の事態を「見える化」せよ――想定と共有から始まる本気の災害対策
日本では地震や台風、水害など、あらゆる自然災害が常に生活と経済を脅かしています。特に近年では、気候変動の影響による「想定外」の災害が増加傾向にあり、これまでの「過去の経験則」による対策では命も企業活動も守れなくなりつつあります。では、どうすればよいのでしょうか。
答えは、「最悪の事態を想定し、具体的な影響を事前に見える化・共有すること」です。これは恐怖を煽る行為ではなく、備えと行動の出発点。その本質を、企業・行政・個人それぞれの視点から探っていきます。
1.「起こりうる最悪」を想像できるか?
まず重要なのは、「起こってほしくない事態」をあえて直視し、リアルなシナリオとして描き出す勇気です。たとえば近年では、
✅2018年の西日本豪雨では、想定を超える集中豪雨により200人以上が犠牲に。
✅2023年のリビア洪水では、ダムの決壊により都市機能が完全に麻痺、死者数は1万人規模とされる。
✅東日本大震災でも、津波の高さや原発の多重被害は、想定不足と甘さが露呈した典型例でした。
つまり、「ありえない」と切り捨てていた事態は、実は「ありうる未来」なのです。
2.波及被害の連鎖を読み解く力
災害時のダメージは、直接的なものだけではありません。たとえば企業にとっては、✅浸水による設備や在庫の破損
✅交通網や物流の遮断による供給停止
✅電力・ガス・通信のライフライン停止
✅取引先や下請けの操業停止による連鎖的損失
✅社員の通勤不能・在宅避難による業務中断
といった波及的かつ間接的な被害が、より深刻な経営リスクとなる可能性があります。
こうしたリスクを網羅的に捉えるために、業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の策定・見直しは不可欠です。特にハードウェアに依存する製造業や物流、情報インフラ業などでは、数時間の停止が莫大な損失につながります。
3.大都市の「盲点」:水害と火山灰リスク
首都圏や京阪神、中京圏などの大都市圏では、高層ビルや地下鉄網が張り巡らされ、都市インフラは一見整備されているように見えます。しかし、以下のように複雑な都市機能の「連携の脆さ」が露呈する事態は十分に想定されます。✅首都直下型地震に伴う内水氾濫
✅荒川や多摩川などの大河川の氾濫
✅雨水の排水能力を超えるゲリラ豪雨
✅火山噴火時の火山灰による送電・交通・IT障害
たとえば、地下鉄網が冠水すれば、交通だけでなく電力・通信・地下店舗・上下水道にも連鎖的被害が及びます。2019年の台風19号(ハギビス)では、多摩川の氾濫で都内の住宅地が浸水するなど、都市の治水力の限界も見えました。
火山灰についても、鹿児島県の桜島では日常的に降灰がありますが、首都圏においては阿蘇山や富士山の噴火による灰の堆積で、交通マヒやデータセンターの冷却障害、電力網の損傷などが懸念されています。
4.「最悪のシナリオ」を企業・社会で共有するという視点
防災とは個人や家族の問題にとどまらず、企業経営・地域計画・国家戦略にも直結する社会的課題です。✅自治体と民間企業が連携したリスクマップの共有
✅企業間での情報連携・相互支援体制(相互BCP)
✅地元住民や学校、福祉施設との避難支援協定
✅外国の災害対応事例(例:ドイツのライン川氾濫対応、米国FEMAの災害資源分散戦略)の知見の活用
こうしたアプローチは、「共有知」としての防災を形成し、社会全体のレジリエンス(回復力)を高める土台になります。
5.結論:備えは、未来を守るデザイン
「最悪の事態の想定」とは、恐怖ではなく希望のための思考訓練です。私たちは、自らの暮らしやビジネス、社会システムをどこまで柔軟に、強靭にできるかを試されています。✅何が起きうるのか
✅それがどこまで波及するのか
✅そのとき、自分・家族・企業・地域はどう行動すべきか
この「問い」を日々の議論に据え、社内会議や家庭の話題に上げていくことこそ、真の防災文化の醸成につながります。
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