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〈人的資源新秩序〉高齢者の定義とその多様化:超高齢社会における高齢者像の変遷

1. はじめに:高齢者の定義と社会的背景

日本では、高齢者を65歳以上の者と定義 している。これは、1956年に世界保健機関(WHO)が定めた基準に基づくものであり、国際的にも一般的に用いられる定義 である。しかし、平均寿命の延伸や医療技術の進歩 により、従来の「高齢者」という概念は大きく変化しつつある。

現代の高齢者は、以前に比べて健康で活動的な人が増えており、一律に「高齢者」として扱うことは適切ではなくなってきている。そのため、日本では高齢者を年齢ごとに3つのステージに分類 し、それぞれの特性に応じた社会的対応を進めている。


2. 高齢者の分類とその特徴

(1) 高齢者の3分類
区分年齢特徴
前期高齢者(young old)65~74歳健康で社会活動を積極的に行う層が多い。多くは働いているか、趣味やボランティア活動に従事している。
後期高齢者(old old)75~84歳加齢に伴い、身体機能や認知機能の低下が目立ち始める。医療・介護の支援が必要になるケースが増える。
超高齢者(oldest old)85歳以上日常生活において介助を必要とする人が多くなる。要介護認定率が高まり、医療依存度も上昇する。


(2) 高齢者の人口動向と社会的影響
高齢化の進展により、前期高齢者の人口は2016年をピークに減少 しているが、後期高齢者と超高齢者の人口は増加を続け、今後は前期高齢者の人口を上回ると予測されている。

- 2025年問題(団塊の世代がすべて75歳以上になる)により、後期高齢者の割合が急増し、医療・介護の負担が大幅に増加すると懸念されている。
- 2040年頃には超高齢者の割合がさらに拡大し、介護人材や社会保障制度の維持が大きな課題となる。


3. 高齢者の健康・生活の変化


(1) 健康寿命の延伸と高齢者の社会参加
かつては「高齢者=要介護」といったイメージが強かったが、近年では健康で自立した生活を送る高齢者が増えている。このような傾向を反映し、「健康寿命」の延伸が国の重要な政策目標 となっている。

- 健康寿命とは:「介護を必要とせず、自立して生活できる期間」
- 日本の平均健康寿命(2021年)
- 男性:72.68歳(平均寿命81.47歳)
- 女性:75.38歳(平均寿命87.57歳)

このデータからも、前期高齢者の多くはまだ健康で、社会的活動に参加できる余地が大きい ことがわかる。

(2) 働く高齢者の増加と定年延長
高齢者の健康状態の向上に伴い、「働く高齢者」も増加 している。

- 65歳以上の就業率は2023年時点で約25%(4人に1人) に達しており、労働市場の一翼を担っている。
- 政府は70歳までの就業機会確保を企業に求める「高年齢者雇用安定法」 を施行し、シニア雇用を推進している。
- シニア層の活躍により、介護人材の不足や労働力減少を補うことが期待されている。


4. 超高齢社会における課題と対策

(1) 医療・介護の負担増加
後期高齢者・超高齢者の増加に伴い、医療費や介護負担が増大 することが懸念されている。
- 認知症の増加:2025年には高齢者の5人に1人が認知症 になると予測されており、認知症ケアの強化が必要。
- 介護施設・介護人材の不足:介護職の人材不足が深刻化しており、新たな支援体制の構築が求められる。

対策
✅ 地域包括ケアシステムの強化:在宅介護を推進し、地域で高齢者を支える体制を整備。
✅ ICT・ロボット介護の活用:介護ロボットやオンライン診療を導入し、負担を軽減。
✅ 家族介護者への支援:介護休業制度の拡充、介護者への心理的サポートを強化。

(2) 孤立防止とコミュニティづくり
高齢者の増加に伴い、社会的孤立や孤独死のリスクも高まっている。

対策
✅ 高齢者向けのコミュニティ活動を推進:趣味サークル、地域のイベントを充実させる。
✅ デジタル技術を活用した高齢者支援:スマートフォンやタブレットを活用した高齢者向けのオンライン交流。
✅ シルバー人材センターの活用:高齢者の経験やスキルを活かせる仕事を提供し、社会参加を促進。


5. まとめ:高齢者の定義を見直し、新たな社会設計を

日本における高齢者の定義は65歳以上 だが、高齢者の多様化が進み、一律に「高齢者」として扱うことが難しくなっている。

- 前期高齢者は健康で社会参加が可能な層が多く、シニア雇用や地域活動が重要となる。
- 後期高齢者・超高齢者の増加により、医療・介護の負担が増大し、新たな社会システムの構築が求められる。
- 健康寿命の延伸、働く高齢者の活躍、デジタル技術の活用が、超高齢社会を支える鍵となる。

今後は、高齢者を単なる「支援対象」としてではなく、「社会の重要な担い手」として位置づけ、適切な制度設計を行うことが必要 である。



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