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攻撃的なクレーマーの態度を緩和する方法

感情的なお客様、特に攻撃的なクレーマーへの対応は、単にクレーム処理や問題解決をする以前に、まずその攻撃性や感情の高ぶりを緩和することが必要です。適切な対応をしなければ、クレーマーの怒りはさらに激しくなり、状況がエスカレートしてしまう可能性があります。そこで、攻撃的な態度を和らげる方法について詳しく見ていきましょう。


1. 攻撃性の背景にある心理を理解する

心理学では、人が攻撃的な態度を取る背景には、「怒り」や「恐怖」といった感情があるとされています。心の中に蓄積された怒りや恐怖が、表面的に攻撃的な言動や態度として表れるのです。

お客様が過度に攻撃的になっている場合、その心理状態は「強い怒りや恐怖」を感じていることが原因である可能性が高いのです。お客様が店や会社の製品やサービスに対して直接怒りや恐怖を抱いている場合もあれば、他のストレスが要因となり、その矛先がクレームという形で向けられることもあります。

一般的に、人間の攻撃性の究極的な目的は「他者否定」です。つまり、相手を否定することで自分を守る、いわば「自己防衛(プライド保護)」のために攻撃性が発揮されているのです。クレームを申し立てるお客様の場合、店や会社、スタッフを否定することで自らの正当性を主張しようとしているのです。

この攻撃性の根底にあるのは、自己防衛やプライドの保護が必要であるという認識です。つまり、「攻撃されている」「プライドが傷つけられている」と感じているために、相手を攻撃することでバランスを取ろうとしているのです。これは、何らかの欲求が満たされない(フラストレーションが溜まっている)ことを示しています。


2. フラストレーション-攻撃仮説

心理学者のジョン・ダラード(J.Dollard)は、「フラストレーション-攻撃仮説(欲求不満-攻撃仮説)」を提唱しました。これは、人間は「他者・自己・社会に対する欲求」が満たされないとき、自尊心が傷ついて攻撃的になるという理論です。

攻撃性を生む代表的な状況は以下の6つに分類されます。

1. 身体的な危害・損傷・攻撃を受けたとき → 自己防衛的な怒りや攻撃性
2. 精神的な侮辱・差別・名誉毀損(誹謗中傷)を受けたとき → 自尊心に基づく怒りや攻撃性
3. 大切な家族・友人・知人が傷つけられたとき → 共感性と復讐心に基づく怒りや攻撃性
4. 財産・金銭・債権が奪われたとき → 財産保護的な怒りや攻撃性
5. 社会的な不正義が罰せられないとき → 倫理感情や公共心に基づく怒りや攻撃性
6. 自分の欲求が満たされないとき → フラストレーションに基づく怒りや攻撃性

クレーム対応においては、特に(4)と(6)が該当するケースが多いと考えられます。

お客様は、「購入した製品やサービスに満足するはずだったのに、それが実現しなかった」という理由で、クレームを強く主張することが多いのです。この「自分の欲求が阻害された」という状況が攻撃性の原因になっているのです。


3. 攻撃性を緩和する方法

攻撃的なクレーマーの態度を緩和するためには、以下の方法を実践することが重要です。

① 傾聴の姿勢を示す
お客様が強い怒りを抱えているとき、最も効果的なのは「話をしっかり聴く」ことです。多くのクレーマーは、自分の話を聞いてもらえないと感じることで、さらに攻撃的になる傾向があります。以下のようなテクニックを用いると効果的です。

- アイコンタクトを取りながら話を聞く
- 相槌を打ちながら、お客様の感情を受け止める
- 「おっしゃることは理解できます」「お気持ちはよくわかります」と共感を示す

② 否定せずに共感する
クレーム対応の際にやってはいけないのは、お客様の主張を頭ごなしに否定することです。

「そんなことはない」「当社のルールですから」などと返すと、火に油を注ぐ結果になりかねません。まずはお客様の意見を受け入れ、共感を示した上で冷静に対応することが重要です。

③ 声のトーンや態度を落ち着かせる
お客様が怒っているときに、こちらも興奮した態度を取ると、争いが激化してしまいます。声のトーンを落ち着かせ、ゆっくりとした口調で話すことで、相手の感情を鎮めることができます。

また、姿勢を低くし、落ち着いた態度を示すことも有効です。例えば、対面で話をする場合、少し前傾姿勢になりながら話を聞くと、お客様に「あなたの話を真剣に聞いています」という印象を与えることができます。

④ 具体的な解決策を提示する
お客様は単に怒りをぶつけるだけでなく、何らかの解決策を求めている場合も多いです。

「では、こちらの対応でご納得いただけますでしょうか?」といった形で、具体的な解決策を提示することで、クレームを円満に解決できる可能性が高まります。


4. 現代社会とクレーマーの心理

現代社会では、「誰からも自分の価値を認めてもらえない」という不満を抱えている人が増えています。

●就職活動がうまくいかない
●仕事で評価されない
●人間関係がうまくいかない

このようなフラストレーションが蓄積し、それがクレームという形で発散されることもあります。

こうした背景を理解した上で、お客様の心理に寄り添うことで、攻撃的な態度を和らげ、円滑なクレーム対応が可能になります。

今後、クレーマー対応の重要性はさらに高まると考えられます。マニュアル通りの対応ではなく、お客様ごとの心理を理解し、柔軟な対応を取ることが求められるでしょう。




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